納豆菌に関連した隠れた力に、最近、大きな注目を集めているのが血栓溶解酵素「ナットウキナーゼ」の発見です。これこそ納豆菌と大豆の出会いによって生まれた究極の成分と言えるでしょう。というのも、このナットウキナーゼは大豆と納豆菌が出会うことでしか生まれないからです。
大豆が納豆菌の作用によって発酵した結果生まれた、あの納豆独特の粘りに含まれているのが、このナットウキナーゼなのです。ちなみにあの納豆のネバネバ成分のほとんどは、γ-グルタミン酸というアミノ酸の一種で旨味成分の一つなのです。
このナットウキナーゼには、血栓ができるのを予防し血栓を溶かす働きがあります。このことを最初に発見したのが、岡山県立短期大学の須見洋行先生でした。須見先生は、納豆の成分効果を研究しようと、人工的に作った血栓(言わゆる血の固まり)の上に納豆を乗せ、体温と同じ37℃に保って変化を見たところ、見事に血栓が溶解しているのを発見しました。
その原因成分を探ってみたところ、納豆のネバネバに含まれる一つの酵素に行き着き、それを納豆の名前にちなんで「ナットウキナーゼ」と呼ぶことにしたのです、納豆の中の一成分が、死亡原因において高い比率を占める心筋こうそくや脳血栓、脳卒中などの原因となる血栓を予防したり、血栓を溶解する働きがあります。今大きな社会問題にもなっているこれらの病気の後遺症、ボケをも防いてくれる可能性があるということです。
これは医学的に見て大きな発見ですし、実際にその報告は大きな驚きを持って迎えられました。この酵素の血栓溶解能力は驚くべき強さであることが、研究によって分かってきました。現在、心筋こうそくなどの発作が起きて危険な状態になると、病院ではウロキナーゼという血栓溶解剤を投与するのですが、その薬の効果と納豆100グラムを食べた時に摂取できるナットウキナーゼの効果はほぼ同じだと言われます。どんなしくみで血栓を溶解するのでしょうか。それを知りたいところですが、残念ながらまだそのしくみまでは明らかにされていません。
血栓を予防するために人間の身体の中に分泌される成分にプラスミンという酵素があり、このプラスミンという酵素の合成には、血管壁の内側の細胞から血液中に放出されるある物質が必要であり、その物質が不足するから血栓症になると言います。ナットウキナーゼはその物質と大きな関わりがあるらしいのですが、でも分かっているのはそこまで。おそらくナットウキナーゼは、その物質の分泌を促進する働きがあると推定されていますが、定かではありません。ともあれ、このナットウキナーゼの働きが解明されれば、成人病予防、死亡率の低下、ボケの防止などに大きな力を発揮すると思います。
もちろん納豆を食べていれば、このナットウキナーゼは自然に摂取できます。動物実験によって、このナットウキナ一ゼは胃や腸に入っても活動を続けていると言いますから、この点が納豆菌とよく似ていると思います。いや、もしかしたら、納豆菌がうまくガードをしているから、ナットウキナーゼは強いのかもしれません。何せナットウキナーゼは納豆菌から生まれた酵素、無関係ではありません。