■必須アミノ酸を多く含み、整腸・消化を助ける効果があるビール酵母に、強い消臭効果もあることが分かった。小泉武夫・東京農大教授(醸造・発酵学)と江原勝夫・元東京工業大教授(高分子工学)が共同で発表したもので、臭気分子を吸着したり、腸内で分解を促進して口臭・体臭を弱めるという。

【戸嶋誠司】
小泉教授は、分解後のアルコール臭の研究途中でビール酵母の機能に着目した。においを電気的に計測する「においセンサー」の開発研究をしている江原元教授と共同で、実際に臭気を抑える効果があるのかどうかセンサーを使って実験することにした。
国内で流通するビールのうち、ビール酵母が入っている「銀河高原ビール」を実験に使い、2人の被験者に同ビール(500ﾐﾘﾘｯﾄﾙ)と酵母の入っていない他社ビール(同)を飲みながら、ニンニク入りギョーザを食べてもらった。

時間を追ってセンサーで口臭を測ったところ、ギョーザを食べた直後の口臭は2人とも差がなかったが、ビールを飲みながら測った口臭は銀河ビール130(無臭を0とした場合のセンサー値)だったのに対し、酵母なしビールは185だつた。40～50分後の計測では、▽銀河19、酵母なし63▽2時間後では銀河12、酵母なし29▽翌朝の計測では銀河13、酵母なし25-という値が得られた。銀河高原ビールでは、翌朝の口臭強度は前日の実験前より下がっていた。

江原元教授によると、「ニンニク臭さ」はニンニクの臭気分子(三硫化アリル)が口の中の粘膜に付着することで発生するが、ビール酵母が臭気分子を吸着させて体内に運び、さらに酵母が腸内酵素を活性化させて分解を早めるため、結果的に口臭・体臭を弱めることにつながるという。

銀河高原ビールには1ccあたり4000万～5000万個のビール酵母が入っている。また、国内の他の地ビールにも酵母を残すタイプがある。

一方、国内の大手ビール会社は品質維持のためろ過をして酵母を取り除いて出荷している。ブルーイング・コンサルタントの田村功さん(62)は「ヨー
ロッパでは酵母を残すタイプのビールが多いようだ。

品質に不安定さは残るが、ビールはワインのようにもともと味が不安定なもの、と受け止められている」という。

小泉教授は「酵母を生きた状態で取れる食品はそう多くない。

酵母の活性度を維持する技術が進歩すれぱ、いろいろな利用法が可能だろう」と話している。